後継者不在の旅館オーナーへ|廃業と売却(事業承継)2026年版・費用と流れの目安
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執筆・監修:宮﨑洋平(宅地建物取引士)/株式会社REYADO 代表・宅地建物取引業 神奈川県知事(1)第33154号
後継者不在の旅館・宿の選択肢は、大きく「廃業(自主的な事業停止・許認可の返納)」と「売却(M&Aによる事業承継)」の2つです。廃業は原状回復・解体費用が生じやすく、売却は買い手探索とデューデリジェンス(DD)を経て事業ごと引き継ぐため、費用抑制や雇用維持につながる可能性があります。
後継者不在の宿が置かれている状況と、廃業か売却かという分岐

「跡を継ぐ人がいない」「従業員はいるが、経営を任せられる後継者がいない」「体力的に、あと何年続けられるか分からない」——REYADOにはこうした相談が全国の旅館・宿オーナーから寄せられます。
背景には、経営者の高齢化、建物老朽化による修繕費、コロナ禍の借入返済、人手不足による稼働率の伸び悩みなど、複数の課題が重なるケースの多さがあります。
こうした状況では「畳む(廃業する)」しか道がないと考えがちですが、第三者に引き継ぐ「売却(M&Aによる事業承継)」という選択肢もあります。費用・期間・雇用への影響が異なるため、実務的な違いを押さえることが判断の出発点になります。
廃業を選んだ場合の流れと費用・負担の目安
廃業の一般的な流れは、①廃止方針の決定→②旅館業の廃止届の提出(提出期限は自治体により定められている場合があります・管轄保健所へ確認)→③従業員への解雇予告・取引先への終了連絡→④宿泊予約の精算→⑤設備撤去・解体工事→⑥原状回復・敷地の引き渡し→⑦清算処理・確定申告、という順に進むのが一般的です。届出様式や必要書類は自治体により異なる場合があるため、事前に管轄保健所へ確認のうえ、複数の費用・実務負担を含めた総額を早めに把握しておくことをおすすめします。
- 解体・原状回復費用:構造・延床面積・立地・産業廃棄物の処理量で変動し一律には言えませんが、目安は木造坪3〜5万円、鉄骨造坪4〜7万円、RC造坪6〜10万円程度とされることがあります。延床300坪の木造旅館なら900万〜1,500万円規模になる試算例もあり、温泉設備撤去やアスベスト対応等で上振れする場合もあります。実額は個別見積もりで要確認です。
- 従業員対応:継続雇用者がいれば、解雇予告手当(労基法20条、予告日数が30日に満たない場合は不足日数分の平均賃金・最大30日分)や再就職先のあっせんなど、労務対応・費用を要します。
解体費用をかけずに事業を引き継げる可能性がある選択肢を、次のページで確認できます。この確認は情報収集であり、売却を決めるものではありません。
売却(M&Aによる事業承継)という選択肢と流れ
売却は、宿を「事業ごと」次のオーナーへ引き継ぐ考え方です。株式譲渡(会社ごと引き継ぐ形)では許可や契約関係が原則そのまま維持されます。一方、事業譲渡(資産を切り出して売る形)では旅館業許可の承継に都道府県知事の承認が必要となる場合や、買い手側での再取得が必要になる場合があります。いずれの形でも、廃業に伴う解体・原状回復費用を避けられる可能性がありますが、買い手探索や審査には一定の期間を要します。
なお、旅館業許可の承継は都道府県によって運用に差があり、事前相談から承認までの所要期間も自治体ごとに異なります。売却スケジュールに影響するため、早めに管轄保健所へ確認しておくと安心です。
流れは①相談・方針整理→②簡易査定→③買い手候補の探索(ノンネームでの打診)→④基本合意(LOI)→⑤デューデリジェンス(DD)→⑥最終契約→⑦クロージング、という順序で進みます。中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」に沿って進めるのが実務の目安で、相談から成約まで数か月〜1年程度を見込むケースが一般的です。
買い手が注視するのは簿外債務・労務・係争のリスクです。REYADOは論点を絞る「個別選択式デューデリジェンス」を採用し、実行は提携する公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士等の専門家が分担します。
廃業と売却、何が違うのか
「手放し方は一つではない」という考え方は、別荘オーナー向け「別荘が"負動産"になる前に知っておきたい「処分」以外の3つの道」でも扱っています。

- 費用:廃業=解体・原状回復費用が発生/売却(M&A・事業承継)=仲介手数料は成約時のみの完全成功報酬(着手金・月額・中間金なし)
- 期間:廃業=手続き中心で比較的短期/売却(M&A・事業承継)=買い手探索・DDを含め数か月〜1年程度が目安
- 雇用:廃業=従業員は退職対応が必要/売却(M&A・事業承継)=雇用契約を保ったまま引き継げる可能性
- 手元に残るもの:廃業=建物・土地のみ(別途売却の検討要)/売却(M&A・事業承継)=譲渡対価(成約時)
廃業と売却では税務上の扱い(譲渡所得・法人税等)が異なる場合があり、個別試算は提携税理士へご確認ください(相続で引き継いだ宿はFAQ Q3も参照)。
事業承継はどこに頼む? ― 公的窓口と民間仲介の使い分け
後継者がいない旅館の事業承継の相談先は、大きく「公的窓口」と「民間の仲介」の2系統に分かれます。どちらか一方を選ぶものではなく、公的窓口で全体像を整理してから民間の仲介に進む、という使い方もできます。
- 公的窓口(事業承継・引継ぎ支援センター):国が47都道府県に設置している原則無料の相談窓口です。中立的な立場で事業承継の選択肢を整理でき、最初の入口として向いています。センター自身がマッチングから成約まで支援するルートに加え、センターに登録された民間のM&A支援機関を紹介するルート(民間側の支援は有償)もあります。
- 民間の仲介:①M&A仲介(全業種対応・報酬はレーマン方式が一般的)②宿泊業特化の専門仲介 ③不動産仲介(宅地建物取引業者)の3つの型があります。旅館は「事業」と「不動産」の両面を持つため、どの型に頼むかで、引き継げるもの(営業許可・従業員・取引先)と手数料体系が変わります。
当社(REYADO)は、旅館・ホテル・一棟貸しに特化したM&A(事業承継)と不動産売買の両方を扱う宅地建物取引業者として、国内に加えて海外投資家(台湾・香港・シンガポール・米国・豪州等)へも買い手を募集します。相談先の型ごとの違い(報酬・規制・利益相反)は「旅館の売却、どこに相談する?」で詳しく比較しています。
REYADOの手数料体系と仲介としての立場
REYADOの承継売却(株式譲渡・事業譲渡)における売り手側の仲介手数料は、成約時のみいただく完全成功報酬制です。成約価額に応じた帯別料率(1億円以下6%〜3億円超3%・税別・最低600万円)で、着手金・月額・中間金はありません。算定は成約価額(譲渡対価)ベースです。宿を不動産として売買する場合は、宅地建物取引業法の上限の範囲内(売買価格×3%+6万円+税)の仲介手数料となります。
また、REYADOは中小企業庁のM&A支援機関への登録を申請中です(2026年7月時点)。
仲介として売り手・買い手の双方から手数料を受領する場合は、一般に利益相反が生じ得るため、REYADOは中小M&Aガイドライン(第3版)に沿い、双方から受領する旨とその内容、どちらの利益を優先する立場か(仲介か、一方の代理か)を契約前に書面で開示したうえで進めます。重要事項説明など宅建士の独占業務が必要な場面では、有資格者が対応します。
国内外に広く募集するという選択肢
売却先探索は国内の同業者・投資家に絞られがちですが、REYADOは国内に加え台湾・香港・シンガポール・米国・オーストラリアの5カ国・地域にも募集をかけています。レインズ掲載や他社客付けも歓迎する「フルオープン募集」の方針で、売主に最も有利な条件を提示できる相手を優先します。
国内投資家には後継者難や運営の手間がネックになりやすい一方、海外の富裕層・投資家は「日本の観光資産」自体に価値を見出すことがあり、母集団が広がるほど条件に合う相手が見つかる可能性は高まります。
海外投資家との取引では、取引形態や投資家の属性によって外為法(FEFTA)に基づき原則事後報告(一定の場合は事前届出)を要するほか、契約書・IT重説の英語対応が必要になることがあります。該当有無は専門家への確認をおすすめします。
相談は「売却の決定」ではない
まず施設概要(所在地・客室数・稼働状況等)をヒアリングし、売却時の目安を見込みベースでお伝えする簡易査定を行います。買い手探索やDDには進まず情報提供のみで完結し、オンライン相談にも対応しています。
まとめ:廃業の前に、売却という選択肢を検討する
廃業と売却、どちらが適切かは建物の状態・簿外債務の有無・従業員の意向によって異なり、一概には判断できません。
REYADOは宅地建物取引業者(神奈川県知事(1)第33154号)として、中小M&Aガイドライン第3版に沿い、簿外債務・労務・係争を個別に切り分けたDDを行い、国内外の買い手候補を広く探索します。承継売却の手数料は成約時のみの完全成功報酬制(着手金・月額・中間金なし)で、料率表は契約前に書面でご説明します。
後継者不在でお悩みの場合は、廃業を決める前に一度ご相談ください(相談無料)。
よくある質問
後継者がいない旅館の事業承継は、どこに頼めばいいですか?+
相談先は「公的窓口」と「民間の仲介」の2系統です。公的窓口(国が47都道府県に設置する事業承継・引継ぎ支援センター)は原則無料・中立で最初の整理に向き、マッチング支援に加えて民間のM&A支援機関の紹介も行っています。民間はM&A仲介・宿泊業特化の専門仲介・不動産仲介(宅地建物取引業者)の3つの型があり、旅館は事業と不動産の両面を持つため、営業許可・従業員ごと引き継ぐならM&A型(株式譲渡なら許可は原則そのまま維持・事業譲渡では承認や再取得を要する場合があります)、建物と土地が中心なら不動産型と、譲りたい中身で選ぶのが起点になります。
従業員や取引先、地域に知られずに検討できますか。+
検討初期は社名・所在地を伏せた「ノンネーム」の情報で買い手候補へ打診するのが一般的です。具体的な開示段階では秘密保持契約(NDA)を締結するケースが多く、相談・簡易査定の時点で周囲に知られる可能性は限定的です(開示範囲・タイミングは案件により異なります)。
建物が古い・立地が良くないと言われた宿でも売却の対象になりますか。+
築年数や立地条件は査定額に影響しますが、それだけで売却不可とは判断しません。旅館業許可の有無や収益化の余地など複数の観点から個別に確認します。
相続で引き継いだ宿で、自分は経営していません。相談できますか。+
相談可能です。相続人が経営に関与していないケースも多く、まず建物・許認可・負債の状況整理から始めます。廃業・売却いずれも相続特有の税務論点があるため、提携税理士と連携して確認します。
廃業の手続きを進めている途中でも、売却の相談はできますか。+
廃業届提出前であれば、売却の可能性を並行して確認できるケースがあります。進捗により選べる選択肢が変わるため、早めのご相談をおすすめします。